映 画

  関川秀雄 監督  『きけ、わだつみの声』  1950年作品 ≪旧作映画≫

『きけ、わだつみの声〔映画=1950年・復刻シナリオ〕』,日本戦没学生記念会発行,1986年刊
   死んだ人々は、還ってこない以上、
   生き残った人々は、何が判ればいい?

  ジャン・タルジューの詩(渡辺一夫訳)を掲げて開幕するこの映画が公開されたのは 1950年6月15日。  朝鮮戦争勃発の迫る時期だった。  前年の 10月に刊行された『きけ わだつみのこえ』は、大きな感動をもって迎えられ、戦後ベストセラーのひとつとなるが、その映画化された作品として、「珠玉の反戦映画」との世評を得た。


  出目昌伸 監督  『きけ、わだつみの声』  1995年作品 ≪新作映画≫
『きけ、わだつみの声:映画〔1995年〕の手引き』,全国大学生活協同組合連合会編,1995年刊
  戦後50年を記念して、戦没学生の手記『きけ わだつみのこえ』をもとに再映画化された。東京六大学のラグビー選手として競いあう若者たちがタイムスリップして、アジア・太平洋戦争という歴史の渦中に巻き込まれ、運命を変えられていく――フィリピンと沖縄の戦線で、また戦時下日本での、真っ只中の青春群像を新しい視点で描いた作品。

  「あの時代は、すべての過ちを若い人の血で贖った時代であり、この映画『きけ、わだつみの声』では、 そういう若い人たちの心の奥底を描いています。今の人たちが抱く 《 どうして反対しなかったのか 》 《 なぜ逃げなかったのか 》 という疑問に対し、戦争体験世代の最後にひっかかっていた私は、今の 時代につながるものを作り、わだつみの声を死語にしてはならないと思っています。」( 出目昌伸 監督 )




わだつみ会の集会で上映した映画作品の紹介       

      降旗康男 監督 『ホ タ ル』  2001年作品  (2002年 8・15集会上映)

      家城巳代治 監督 『雲ながるる果てに』  1953年作品  (2001年 8・15集会上映)

      エイアル・シヴァン監督 『スペシャリスト―自覚なき殺戮者―』  1999年作品            (2000年 8・15集会上映)




映画『きけ、わだつみの声』>(新・旧) 作品紹介


  旧 作関川秀雄 監督  『きけ、わだつみの声』  1950年作品                              VIDEO


映画 『きけ、わだつみの声』


関川秀雄 監督
東横映画京都撮影所作品/モノクロ/35ミリ/107分
1950年6月15日封切

        スタッフ
        製作……………マキノ満男
        企画……………坪井    興
        製作担当………岡田    茂
        構成……………八木保太郎
        脚本……………船橋  和郎
        監督……………関川  秀雄
        助監督…………小沢  忠弘
                     永塩  良輔
        撮影……………大塚  新吉
        照明……………中山  治雄
        録音……………加瀬    久
        音楽……………伊福部  昭
        美術……………桂  長四郎
        装置……………西田  留吉
        編集……………宮本信太郎


キャスト
牧見習士官(東大仏文在学中)………沼田  曜一
青池軍曹(三高在学中)………………伊豆    肇
箕田一等兵(美校在学中)……………稲垣  昭三
秋山一等兵(早大高等学院在)………川崎    保
河西一等兵(東大経卒)………………河野  秋武        1950年公開のときのポスター(部分)
大木二等兵(東大文助教授)…………信    欣三
野々村中尉(慶応医卒)………………林    孝一
木村見習士官(師範学校在)…………杉    義一
柴山少佐(士官学校卒)………………上代  勇吉
岸野中尉(士官学校卒)………………原    保美
山田軍曹(召集兵)……………………佐野  浅夫
大町伍長(召集兵)……………………大森  義夫
根岸兵長………………………………月    京介
衛生兵…………………………………高原  駿雄
馬取兵…………………………………時田  一男
鶴田上等兵……………………………花沢  徳衛
飯島一等兵……………………………増淵  一夫
千葉上等兵……………………………恩庄  正一
隊長当番………………………………菅沼    正
伝令……………………………………小崎  次郎
矢野敦子(女子医専在)………………沢村契恵子
箕田の母………………………………杉村  春子
河西の母………………………………英  百合子
東大仏文科生…………………………藤間  広一

    誰のための戦争であったか? あの戦争で戦
没した学生の手記が、生き残った人々の心をしめ
つけている。  が、書き残し得なかった数限りない
人々の胸一杯に充ちていた思いは、誰にも知られ
ずに地下に埋められたままである。  けれども、人
間が人間として生き得られなかった人々の思いは、
等しく、人が人として生きて行ける自由と平和への
希望ではなかったろうか。     ( 河野秋武=俳優 )

物語 は、「インパール作戦」で敗走するある陸軍部隊内部の、下士官・兵の多くを占める学徒兵と士官学校出身の大隊長・副官等との間の葛藤を中心にして、学徒兵たちの入営前生活の点描、回想シーンを織り混ぜて展開する。
   応召して二等兵で現地に引き出された大木(信欣三)は、かって「出陣」目前の学生たちにモンテーニュの文章を講じ、「哲学する理由は死に親しむことである」という一節を示したが、その時の学生のひとり牧見習士官(沼田曜一)に敗走部隊で出会う。  同じ部隊には、学徒兵の青地軍曹(伊豆肇)、河西一等兵(河野秋武)らがいて、岸野中尉(原保美)ら幹部との間に軋轢を生じている。
   「こんなザマで捨てる命なら、何故、あの時、命をかけなかったんだ」 と悔やむ河西は、飢えに苦しむ兵士を率いて大隊長の馬を食用に供し、岸野により銃殺される。  玉砕の師団命令を受け、部隊は学徒兵の簔田一等兵(稲垣昭三)、秋山一等兵(川崎保)らを含む傷病兵を置き去りにして転進。  傷病兵は手榴弾で自爆をとげる。
   連合国軍の猛攻を浴びて部隊が全滅する過程で、大隊長は副官らを率い逃亡。  青地は戦争の無謀・愚劣を絶叫して白旗を高々と掲げ、「紅萌ゆる」(三高寮歌)を歌いながら硝煙の中を突き進む。  砲弾の嵐の下、瀕死の牧を抱えて、大木は、モンテーニュの真の考え方は、死に親しむところから抜け出て、「生を考え、人類の後継者を信じよう」 とする態度に変わったということを、かって学生たちに言おうとして言えなかったと述懐し、「我々は魂の自由を抵当に入れてしまった」 とうめく。  (上映時間は1時間47分、白黒フィルム)







  新 作出目昌伸 監督  『きけ、わだつみの声』  1995年作品                              VIDEO


映画 『きけ、わだつみの声』


戦後50年記念作品
早坂暁 脚本/出目昌伸 監督
東映・バンダイ提携作品/カラー/35ミリ・ビスタ/129分
1995年6月3日封切

      
          スタッフ
          製作…………………………高岩   淡
                                山科   誠
          企画…………………………岡田 裕介
          プロデューサー……………鍋島 壽夫
                                拓植 靖司
                                角田 朝雄
          脚本…………………………早坂   暁
          監督…………………………出目 昌伸
          助監督………………………井坂   聡
          監督補佐…………………長谷川 計二
          撮影…………………………原  一民
          美術…………………………北川  弘
          音楽…………ギル・ゴールドスタイン
          照明…………………………篠崎 豊治
          録音…………………………柿沼 紀彦
          編集…………………………西東 清明
          記録………………………久保田 民子
キャスト
勝村 寛(少尉) ……………織田 裕二
相原 守(一等兵) ………風間 トオル
大野木上等兵………………的場 浩司
津坂映子(従軍看護婦)……鶴田 真由
鶴谷勇介……………………緒方 直人
芥川雄三(少尉)…………仲村 トオル
近藤中尉……………………遠藤 憲一
原口軍医…………………河原崎 建三
橋本婦長…………………もたいまさこ
大橋軍曹……………………斎藤  暁
馬越上等兵…………………武野 功雄
高倉一等兵…………………倉崎 青児
安原クニ子…………………水木   薫
坂見中隊長…………………江角 英明
小野寺司令…………………奥田 瑛二
教官………………………大和田 伸也
隊長…………………………辻   萬長
司令官………………………寺田   農
各務憲兵大尉………………石橋 蓮司
鶴谷総治…………………井川 比佐志
鶴谷タマエ…………………今井 和子
藤村保江…………………岩崎 加根子
大島教授……………………高橋 悦史
高見沢教授…………………田村 高廣
相原巌………………………佐藤   慶
相原の母……………………島 ひろ子
芥川克代……………………佐藤 友美
芥川弥生……………………石橋 けい
野川貴美江…………………宮崎 淑子
野川三千代…………………白鳥 夕香
村井秋子……………………越智 静香







  8・15集会(2000年)上映 エイアル・シヴァン監督『スペシャリスト―自覚なき殺戮者―』
  1999年作品


      映画 『スペシャリスト―自覚なき殺戮者―』

監督・製作:エイアル・シヴァン
脚本:エイアル・シヴァン/ロニー・ブローマン
編集:オードリー・モーリオン
音楽:ニコラス・ベッカー/オードリー・モーリオン

1999年/ドルビーSRD/35mm
日本語英語字幕付き / 監修:高橋哲哉 / 日本語字幕:水原文人 / 配給:セテラ・インターナショナル
1999年第49回ベルリン国際映画祭招待作品


アドルフ・アイヒマン
  元ナチスのエリート中佐。「ユダヤ人移送計画」の専門家(スペシャリスト)で、夥しい数のユダヤ人を強制収容所に送り込み,死に至らしめた男――この映画は、1961年にエルサレムで裁かれた"今世紀史上、最大の犯罪に荷担した男"の素顔に迫るフィルム・ドキュメンタリーである。

  この衝撃的映像はナチス戦犯裁判で唯一の記録映像であり、近年発見された350時間にわたるフィルムを約2時間に編集したもの。脚本を書いたシヴァン(イスラエルの映画作家、1964年生まれ)とブローマン(1950年生まれのフランス人で「国境なき医師団」の代表を長くつとめた)は、今世紀を代表する政治理論家のひとり、ハンナ・アーレントの著作『イェルサレムのアイヒマン――悪の凡庸さについての報告』(1963年刊)に触発されてこの映画を製作し、ホロコーストについて新たな見地を見出した。同じくホロコーストの証言記録を映像化したクロード・ランズマン監督の長編映画『ショアー:ユダヤ人大虐殺』(1985年)との対比でも話題になった作品である。

  既存の記録映像に対して最新のデジタル処理を行うという画期的試みが、作品の意図を明確にし、裁判に臨場感を与えている。当時世界がその動向に釘付けになった"アイヒマン裁判"の記録映像のモンタージュを通じて、市民の戦争責任と"市民的不服従"を問いかける恰好の素材を提供している。







  8・15集会(2001年)上映 家城巳代治 監督『雲ながるる果てに』1953年作品

映画 『雲ながるる果てに』

八木保太郎・家城巳代治・直居欽哉 脚本/家城巳代治 監督
新世紀映画・重宗プロ提携作品/モノクロ/16ミリ/100分
1953年6月2日封切

      
      スタッフ
      製作…………………………重宗 和伸
                  伊藤 武郎
                  若山 一夫
      脚本…………………………八木保太郎
                  家城巳代治
                  直居 欽哉
      撮影…………………………中尾駿一郎
                  高山  弥
      音楽…………………………芥川也寸志
      美術…………………………五所福之助
      録音…………………………空閑 昌敏
      照明…………………………若月 荒太


キャスト
大滝中尉……………………鶴田 浩二
深見中尉……………………木村  功
松井中尉……………………高原 駿雄
笠原中尉……………………沼田 曜一
岡村中尉……………………金子 信雄
倉石参謀……………………岡田 英次
村山飛行隊長………………原  保美
深見の母……………………山田五十鈴
瀬川道子……………………山岡比佐乃
女将…………………………岸  輝子
北中尉………………………清村 耕二
山本中尉……………………沼崎  勲
田中中尉……………………織本 順吉
金子司令……………………加藤  嘉
片田飛行長…………………神田  隆
秋田の妻・町子……………朝霧 鏡子
芸者・富代…………………利根はる恵
出演者の声 ・・・・・・・ 木村 功 ( 深見中尉 )

   なんの批判ももたされなかった予備学生特攻隊、ここも又「真空地帯」である。この前の「真空地帯〔山本薩夫監督、1952年作品〕にしても、この映画にしても、形こそちがえ、日本軍隊の無謀を物語るものであり、そしてファシズムの力におどらされた全国民の姿なのだ。かつて僕達も味わったこの悲劇をくりかえすことがあってはならない。そのためにこそ是非ともこの映画を完成し、みなさんに観ていただきたいと思う。       (1953年)







  8・15集会(2002年)上映 降旗康男 監督『ホ タ ル』2001年作品


映画 『ホ タ ル』


降旗康男 監督 
東映作品/カラー/35ミリ/114分
2001年5月26日封切
      
スタッフ
製 作………………………高岩  淡
       「ホタル」製作委員会
企 画………………………坂上  順
脚 本………………………竹山  洋
            降旗 康男
撮 影………………………木村 大作
照 明………………………渡辺 三雄
録 音………………………本田  孜
音 楽………………………国吉 良一
美 術………………………福澤 勝広
装 飾………………………若松 孝市
編 集………………………西東 清明
助監督………………………佐々部 清

キャスト 山岡秀治……………………高倉  健 山岡知子……………………田中 裕子 藤枝洋二……………………井川比佐志 藤枝真実……………………水橋 貴己 金山文隆(キム・ソンジェ)……小澤 征悦 緒方成文……………………小林 稔侍        山本富子……………………奈良岡朋子 大塚久子……………………小林 綾子 中島…………………………中井 貴一 山崎…………………………石橋 蓮司 竹本…………………………夏八木 勲 鉄男…………………………原田 龍二 山岡…………………………高杉 瑞穂 藤枝…………………………今井 淑未 知子…………………………笛木 夕子 村の長老……………………高  雪 峰 キム・ソンジェの叔母……田   淑 キム・ユンジュン…………朴   雄 キム・ヨンギル……………朴  世 範



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