『新版 きけ わだつみのこえ』の読者へ
一九四九年に発行された『きけ わだつみのこえ』は、大きな感動をもって迎えられ、戦後平和運動の精神的な源泉となった。そして「現代の古典」という声価を得るにいたっている。
戦後五十年、この節目の年にあたって、新しい読者へ、新版をおくる。
新版では、戦没学生の心の軌跡が戦争中の出来事やかれらの生活のさまざまな局面とのつながりにおいて理解されるよう、必要な改訂をおこない、大幅な増補をほどこした。
死者は記憶されることで生きる。時代の推移と状況の変化にもかかわらず、読者に受けとめようとする誠実な意志があるかぎり、戦没学生のどの言葉も、読者の胸に刻まれるにちがいない。
この新版を刊行するにあたって第一に念頭にのぼるのは、つねに若い世代の読者である。若い皆さんが、本書から不戦、反戦平和の遺志をうけとり、あなたの生きかた、社会や歴史の見方を養う糧としてくださるよう心から願う。
一九九五年十二月一日
日本戦没学生記念会(わだつみ会)